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読書録「空の中」

「空の中」 有川 浩・著 角川文庫


日本の国産ジェット機として開発が期待されている
通称「スワローテイル」。
国家規模のプロジェクトとして超音速ビジネスジェットが開発され、
ようやく1号試験機が最終テストとして
高度2万メートルでの超音速飛行を行うことになっていた。
これが成功すれば、華々しいデビューを飾ることができるのだ。

ところが、高度2万メートルに上昇した刹那、
期待は爆発炎上してしまう。

1ヶ月後、同じ空域で演習中の自衛隊機が、
やはり高度2万メートルまで上昇したところ爆発するという事故が起きる。
2機のうち、武田光稀三尉が乗る1機はなんとか爆発を逃れて帰還した。
その武田三尉のもとに事故調査委員として
「スワローテイル」の製造元である特殊法人から派遣されたのは、
まだ20代半ばの春名高巳である。
非協力的な武田三尉になんとか事故のことを語らせようと
つきまとう春名。

この二人が「大人側の主人公」とすれば、
高校生の斉木瞬と天野佳江は「子供側の主人公」だ。
瞬は海岸で大きなクラゲのような謎の生物と遭遇する。
UMA好きの佳江に押し切られ、
瞬の家に謎の生物を持って帰ってしまう。
ちょうどそのとき、瞬の父、航空自衛隊パイロットの斉木三佐が
訓練飛行中に殉職したことを知らされる。
高度2万メートルで爆発した機に乗っていたのが斉木三佐だったのだ。
唯一の肉親だった父親もなくしてしまった瞬だったが、
「フェイク」と名付けた謎の生物とコミュニケーションをとることで、
自分自身が気付かないうちに現実から乖離していくようになる。
そんな瞬を心配する佳江だったが、
今はどんな言葉も瞬には届かないとの思いから黙認してしまう。

やがて、武田三尉と春名高巳によって、
事故空域の高度2万メートルには、
未知の巨大な生物が存在していたことが判明する。
どうやら高度な知識を持っているようなのだが、
ヒトとは全く違う価値観を持っているため
なかなか上手くコミュニケーションを取ることができない。

「白鯨」と名付けられた謎の生物を巡って、
保護派と保護反対派が対立するのだが・・・

保護反対を最後まで強固に訴え続けているのは、
爆発炎上事故により死亡した「スワローテイル」のテストパイロットの一人娘、
高校生の白川真帆をリーダーとした集団だった。
真帆の言い分は、
たとえ今現在「白鯨」が人類を攻撃してこないとしても、
いつ人類に対する脅威になるか分からない、
レーダーに映らない体と特殊で強力な攻撃能力を持つ
潜在的な脅威である「白鯨」を野放しにしておくのは危険である、
ただちにこれを排除するべきである・・・というものである。

この主張を読んでいるとき、
つい現実の「犬を巡る問題」と同じだと思ってしまった。
たとえしつけをされていて、今は従順で大人しいように見えていても、
いつ誰に牙を剥くかはわからない。
したがって、どんなときでもリードは放してはいけない・・・
つまり、将来の危険に対してあらかじめ対処しておけ、というものだ。

自分と異質なもの、完全なコミュニケーションを取るのが難しい生き物に対して、
信頼しながら絆を強めていこうとするか、
最初から信頼できないものとして排除しようとするか。
日本では、異質なもの、危険そうなものは
排除しようとする傾向が強いのではないだろうか。
もちろん、犬の場合は、オフリードによって実際に周囲に迷惑をかける
個体がいるのは事実である。
これは飼い主がしつけをしていないにも関わらず
犬を自由にさせるというのが間違いであり、
責められるべきは飼い主の意識の低さなのだが、
世間では犬を放すという行為全般に対して非難が集中するのはなぜだろうか。
やはり、排除すべき対象は同胞である飼い主ではなく、
異質な生き物である犬になってしまうのだろうか。

話が逸れてしまった。
本書では、「白鯨」は主人公たちの手から離れ、
国家の白鯨対策局が対応することになる。
「白鯨」の協力のもと、さまざまな研究が進められていくようだが、
それは本書で語られる内容ではない。
本編のあとの掌篇「仁淀の神様」では
結婚した瞬と佳江、その息子が登場するが、
「白鯨」については全く触れられていない。
おそらくは「白鯨」を巡って水面下で各国が争うことになりそうだが、
そのようなハリウッド映画的な展開は本書には馴染まない。
派手なアクションも、国際的な陰謀もほとんど登場しない。
基本的に「いい人」ばかりが登場するので
リアルさには少々欠ける部分があるかもしれないが、
その分、読後感は爽やかといえる。
掌篇も含めて500ページ強と厚めの文庫本だが、
楽しみながらすんなり読める作品である。
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