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イベルメクチン中毒について(補足)

注)以下の記事は、2008年6月10日に旧ブログに書いたものです。


以前、コリー系犬種におけるイベルメクチン中毒についての記事を書きました。
今回はその補足情報です。
したがって、以前の記事を未読の方は、
先に「イベルメクチン中毒について調べてみた」の記事を読んでください。
(以前の記事はコチラ

以前の記事では、フィラリア予防薬として用いられている
イベルメクチンという成分についてのみ記載しました。
今回は、イベルメクチン以外の成分、
すなわちミルベマイシンオキシムとモキシデクチンについて調べてみました。


スライド10


イベルメクチンを成分としたフィラリア予防薬は、現在いろいろな製薬会社から出ています。
それに対して、ミルベマイシンを成分とした予防薬はミルベマイシンA、
モキシデクチンはモキシデック錠が主な製品となっています。
注)ここで扱っているのは経口投与の予防薬のみです。
注射やスポットオンタイプもあるようですが、経口薬に比べると安全性がまだ確立していないようなので。


スライド11


イベルメクチン、ミルベマイシンオキシム、モキシデクチンは全て「大環状ラクトン」であり、
化学構造が似ています。
この3つの化学物質以外にも、広く殺虫剤として用いられている成分がたくさんあります。


スライド12

スライド13


大きく分けると、イベルメクチンはアベルメクチン系に属し、
ミルベマイシンオキシムとモキシデクチンはミルベマイシン系に属します。
化学構造が記載されているサイトはコチラ


スライド14


「イベルメクチンとモキシデクチンは化学構造が似ている」という情報は、
ネットで調べているときにあちこちのサイトで見かけました。
ところが、ミルベマイシンも似ているという情報は見かけませんでした。
どうしてでしょうね?

わたしは正確で客観的な情報が欲しかったので、
医学系論文の検索サイトであるPubMedで、イベルメクチン中毒についての論文を検索してみました。
PubMedはコチラ


スライド15


イベルメクチン感受性を示すコリーでは、ミルベマイシンオキシムでも同様の中毒症状が見られたというもの。
イベルメクチンもミルベマイシンオキシムも、通常フィラリア予防で使用される量の10倍以上が用いられています。
フィラリア予防で使用される量では、中毒症状は現れません。
ちなみに、この実験で用いられたコリーのmdr1遺伝子変異については調べられていません。


スライド16


この論文では、通常の30倍量のモキシデクチンを投与しても、中毒症状はみられなかったということです。
この実験でも、コリーのmdr1遺伝子変異については調べられていません。

では、モキシデクチンは完全に安全なのでしょうか?
こんな論文もありました。


スライド17


mdr1遺伝子の変異とモキシデクチンに対する感受性に相関がみられたという論文です。
しかし、ここで用いられているモキシデクチン量は、通常の100倍以上と大変な高濃度です。

これらの論文から考えると、コリー系にはモキシデクチンが一番安全なように思えます。
ただし、絶対確実なことではないので、もちろん投薬には注意が必要です。


さて、イベルメクチン中毒の原因と考えられているmdr1遺伝子の変異ですが、
一体どれくらいの頻度で存在しているのでしょうか?
調べている論文がありフルテキストがダウンロードできたので、データを抜粋してみます。
ちなみに、これはアメリカの研究です。


スライド18


やはり、コリーはダントツに変異の保有率が高いことがわかります。
それに比べて、シェルティーはかなり少ないですね。
中毒の注意が必要な、変異をホモでもつ個体の割合は、100頭に1頭ほどのようです。

この論文では、いろんな犬種のmdr1遺伝子を調べていました。


スライド19


この前の記事では、ボーダーコリーもイベルメクチン中毒の可能性があると書いたのですが、
どうやらボーダーコリーはほとんど可能性がないようですね。

日本でもmdr1遺伝子変異の保有率を調べた論文がありました。


スライド20


調べた個体数が少なく、特定のブリーダー出身とか犬同士が親戚関係にあると
データにバイアスがかかってしまうので要注意です。
それでも、シェルティーを42頭調べて変異をホモでもつ個体がいなかったというのは
シェルティーにおけるmdr1遺伝子の変異は、頻度がかなり低いということをはっきり示しています。


前回と今回の記事をまとめてみると、

1.通常のフィラリア予防で用いる量のイベルメクチンでは、中毒症状を起こす可能性はほとんどない
2.イベルメクチンとミルベマイシンオキシムは、高濃度で投与すると中毒症状を起こすことがある
3.モキシデクチンは高濃度で投与しても中毒を起こしにくい
4.イベルメクチン中毒の原因はmdr1遺伝子の変異と考えられている
5.シェルティーにおけるmdr1遺伝子変異の頻度は低い
6.mdr1遺伝子の遺伝子型は、検査会社で調べてもらうことができる


わたしは自分自身で納得して、イベルメクチン系のイベルメックを処方してもらっていますが、
不安に感じる飼い主さんは、モキシデクチンを処方してもらうのがいいのではないでしょうか?
モキシデクチンよりもミルベマイシンの方が安全だ、という意見がありますが、
今回、この根拠となる理由はわたしには見つけることができませんでした。

イベルメクチン中毒について心配だという飼い主さんは、検査料金がかかりますが
mdr1遺伝子の遺伝子型を調べてもらうのが一番いいと思います。
変異が見つかったときに、あらためて今後の方針などを動物病院で相談されるといいと思います。

いずれにしても、どんな薬でも副作用の危険性は常にあります。
投薬する場合は、万が一のときに動物病院に行けるよう、
休診日の前日や当日の投薬は避けたりする配慮が必要なのだと思います。


今回の記事をまとめるにあたって、いろいろ情報を集めました。
獣医学の専門家に突然メールを送ったりもし、迅速で丁寧な回答をしていただきました。
また、ノバルティス アニマルヘルスと共立製薬にfaxやメールで問い合わせたりもしました。
こちらも丁寧な回答をしていただきました。

しかしながら、イベルメクチン中毒についての基礎研究は驚くほど少なく、
まだまだこれから調べなければいけないことがあるのだなぁと感じました。
人間の病気についての研究には莫大な予算がつきますが、
たかがペットの遺伝病についての研究には、なかなか予算が下りないようです。
また、最近は動物実験に関して世間の目が厳しいために、基礎研究が進まないこともあるようです。
このブログではこの問題については言及しませんが・・・


記事の内容について、間違いや、不正確な記述がありましたら、全てわたしの責任ですのでご指摘ください。



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<わたしのブログ内での関連記事>
イベルメクチン中毒について調べてみた
投薬は2ヶ月に一度でOK?

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